放射線治療品質管理機構

構成6団体

キャリアパス/各種事例集

広島がん高精度放射線治療センター

小澤修一

広島がん高精度放射線治療センター(以下、HIPRAC)は、広島県が設置し、一般社団法人広島県医師会運営の放射線治療施設で2015年10月に開業しました1-3。図1に示す通り、広島市内4基幹病院(広島大学病院、県立広島病院、広島市立広島市民病院、広島赤十字・原爆病院)、広島県、広島市、広島県医師会の7者で構成される「運営協議会」を設置し、この7者による連携・共同事業として運営を行っています。運営協議会の下に2つの検討会議と3つのワーキンググループ(WG)が設置されています。HIPRACは、高度な放射線治療の提供のみならず「人材育成」と「放射線治療の技術的支援」という役割も担っております2。特に、技術支援WGでは、広島県内外の放射線治療施設に対し、物理・技術的品質管理の種々の項目が適切に管理されていることを確認し、証明書を発行するという第3者機関としての活動をHIPRACと4基幹病院の医学物理士と診療放射技師が協力して行っています。

図1 HIPRACの運営協議体制。HIPRACホームページより引用。
図1 HIPRACの運営協議体制。HIPRACホームページ2より引用。

HIPRACでの日常の放射線治療は、図2に示す体制で実施されています。医師部門、診療放射線技師部門、看護師部門と並び、特立した医学物理士部門が設置されており、常勤スタッフとしては医学物理士長と医学物理士2名の3名が雇用されています。

HIPRACでは広島大学と医学物理士教育において連携しており、常勤スタッフの他、広島大学大学院医学物理士養成コースに在籍している学生への指導を兼ねた治療計画やデータ転送を中心としたアルバイト2名を加えた5名の医学物理士の体制で日常診療を進めています。

医学物理士の最大の役割は治療計画の作成になります。その他、診療放射線技師と協力して日常の品質管理業務を行います。毎月、外部委員を招聘して全職種が参加して行われるQAワーキング会議では、HIRPACの品質管理責任者である医学物理士長が座長を務めます。その他、医療安全管理委員会・放射線安全管理委員会の他、臨床カンファレンスなどの定期的に開催される院内の各種委員会やカンファレンスに医学物理士が必ず参加しています。

図2 HIPRACの運営体制。HIPRACホームページより引用。
図2 HIPRACの運営体制。HIPRACホームページ2より引用。

医学物理士の給与体系については、医師・技師・看護師の医療職給料表とは異なる専門技術職給料表(医学物理士)が適応されております。2015年開業当初は各種手当や調整額の面で医学物理士が見劣りする部分がありましたが、現在では他職種とほぼ同様となり、医学物理士の待遇が見劣りするという状況はHIPRACでは是正されております。医学物理士のキャリアパスを考慮する上で、特に給与面の待遇が問題になることがありますが、HIPRACのような県立施設では、国立施設、大学病院、民間病院ではなく、他の県立施設での医学物理士の状況との比較が参考になりました。

現在HIPRACでは医学物理士の人材育成の一環として国内外からの研修生を受け入れていますが、今後、体系化した臨床研修を整備したいと考えております。また地域連携支援活動を通じ放射線治療の品質管理の重要性を広く認知いただき、医学物理士の養成と採用が促進されるような活動を進めて行く所存です。HIPRACが国内における医学物理士のモデルケースとなれるような活動を継続していきたいと思います。


参考文献

  1. 広島がん高精度放射線治療センターについて(広島県ホームページ):
    https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kouseido/gaiyo.html、2023年2月11日アクセス
  2. 広島がん高精度放射線治療センターホームページ:
    https://hiprac.jp/、2023年2月11日アクセス
  3. 小澤修一、山田聖、岩波由美子、権丈雅浩、辻和夫、永田靖:広島がん高精度放射線治療センターの活動について、Jpn. J. Med. Phys. Vol. 38 No. 3: 138–140 (2018)
ページのトップに戻る