放射線治療品質管理機構

構成6団体

キャリアパス/各種事例集

国立がん研究センター中央病院

岡本裕之

国立がん研究センター中央病院 放射線品質管理室は、常勤職員5名、医学物理士レジデント5名、放射線技術部から1名併任、非常勤職員3名、特任研究補助員1名、合計15名在籍している(図1)。常勤職員の内、1名は室長(当人)、1名は医学物理専門職と管理職2名を配置している。当室では、主に患者へ安全かつ高品質な放射線治療を提供するため、放射線治療計画の確認、放射線治療装置の品質管理・品質保証、新規技術の導入に関する医学物理的観点からの検証、臨床試験の医学物理的支援などの業務を担っている。

放射線治療分野の技術革新はめざましく、照射技術の高度化が増している一方、これらの工程から発生するインシデントやアクシデントは、患者への影響度が高く、発見されにくい。当室では、放射線治療における医療事故を未然に防ぐため、個々の事例別の要因や機器的な要因、系統的な要因、ヒューマンエラーに対して分析を行い、リスク分析を通して業務改善の検討、品質管理体制の強化に努めている。また、専門知識や日々の技術革新に対応したスタッフの能力の修得にも注力している。さらに放射線治療は多職種の連携が不可欠な診療である。積極的に多職種と議論・確認作業などを行い、十分な連携構築をすることで医療事故防止に努めている。医学物理士レジデントを含め若手のスタッフが多いことは当院の特徴でもある。図2に示すように、定期的に医学物理士が主導となって実地研修をメインにした教育を行っている。その1つが放射線治療工程研修である。固定具作成、CT撮影、治療計画立案、治療前準備、照射、照射後検証など、すべての工程を通して治療の流れを学ぶことができるのが特徴である。

国立がん研究センター中央病院 放射線治療部門は、放射線治療科、放射線技術部、放射線品質管理室、看護部で構成されている。放射線品質管理室の採用条件は、認定医学物理士を保有していることが含まれ、現在の医学物理士認定機構では修士課程を標準的な学位としているため、実質修士以上の学位がある者でないと採用されない。当室の上長は中央病院院長にあたる。給与体系は、以前は医療職2の区分に含まれていたが、当室の独立化に伴い技術研究職という給与体系が確立した。この給与体系は国立機関の技術研究職とほぼ同等であり、過去に離職率の問題で人員確保に苦労したことから、事務方のご尽力により独立した給与体系を設置していただいた。

キャリアパスについてはいくつかの課題は残る。前述したように当室では常勤5名に対し2名の管理職を配置している。常勤職員が少ないため主任相当の役職を設けることができていない。また医学物理士の他、放射線治療品質管理士、放射線治療専門医学物理士などの専門性の高い資格を保有した場合でも手当が用意できていない。資格取得へのインセンティブが大きな課題である。

小生が入職した当時は医学物理士専属の職員は1名であったが、15年かけて10名以上の体制となった。一番のターニングポイントは給与体系・組織の独立である。独立できたのは前例があったからで、最初に導入した施設を参考に、国立がん研究センターのミッションとして事務方を巻き込んで提案できたのが要因である。当院が他施設の成功例を参考にしたように、皆様も当院の成功例を活用していただきたい。

最後に、国立がん研究センター 医学物理士レジデント制度について紹介する。当レジデントは令和3年度に始まり中央・東病院の両施設で、3年間の医学物理業務を中心とした臨床研修を受けることができる。対象は、医学物理士の試験合格者のみならず、今後、医学物理士の資格取得を目指すものも含め、医歯薬理工学と幅広い分野からの出身者を対象としている。チーム医療および医療安全の観点から求められる医学物理士の資質、能力を育む研修プログラムとなっており、スタッフの豊富な経験、様々な放射線治療機器、卓越したチーム医療を通し、幅広い臨床経験を得ることができる。興味があるかたはご連絡いただきたい。

図1. 国立がん研究センター中央病院 放射線品質管理室(筆者は前列右から2番目)。
図1. 国立がん研究センター中央病院 放射線品質管理室(筆者は前列右から2番目)。
図2. 放射線治療工程研修。参加者は職種問わず若手の職員。
図2. 放射線治療工程研修。参加者は職種問わず若手の職員。
ページのトップに戻る