放射線治療品質管理機構

構成6団体

キャリアパス/各種事例集

筑波大学附属病院

磯辺智範

現在の放射線治療品質管理体制(病院内組織図)

筑波大学附属病院 病院内組織図
  • 放射線治療品質管理委員会:放射線治療の品質管理に関する各種問題点や放射線治療品質管理室からの進言を協議し、必要に応じ病院長をはじめ関連部局への提言を行う組織。
  • 放射線治療品質管理室:放射線治療の品質管理に関する業務を自ら責任を持って行うとともに情報を統括・分析・管理し、必要に応じ現場への提案・助言・協力を行う組織。実質的に放射線治療の品質を管理するための、コンパクトな集団。

放射線治療品質管理室の室長の職種・医学物理士の職位・その他構成員の職種・それぞれの役割

筑波大学附属病院 職種ごとの役割図
(組織の概要)
  • 当院の放射線治療の柱はX線治療(加えて、電子線治療、RALS)と陽子線治療であり、それらの業務を多部門(放射線腫瘍科・放射線部・陽子線医学利用研究センター)の多職種職員(医師・看護師・診療放射線技師・放射線治療品質管理士・医学物理士)が担当する。
  • 放射線腫瘍科・放射線部・陽子線医学利用研究センターから、品質管理を積極的に取り組む人材を集め、各部門でワーキンググループ(WG)を構築している。このWGを、室長を中心にまとめている多職種多部門横断的な組織が「放射線治療品質管理室」である。
(室長と副室長)
  • 室長:放射線治療に関わる職員あるいは教員のうちから、放射線治療品質管理委員会委員長の推薦に基づき、病院長が任命する。資格は規定していない。
  • 副室長:医学物理士若しくは放射線治療品質管理士資格を有する職員あるいは教員のうちから、放射線治療品質管理委員会委員長の推薦に基づき、病院長が任命する。WG、すなわち現場の各作業担当者との連絡調整役である。
(業 務)放射線治療品質管理室の業務は以下のとおりである。
  1. 放射線治療の臨床品質管理方針を立案し、治療業務手順書を整備する。
  2. 機器(治療機器・治療計画機器)管理方針を立案し、機器管理手順書を整備する。
  3. 放射線治療従事者に適切な教育・情報を提供する。
  4. 放射線治療の質・安全を評価する指標を設定・評価し、それに基づいて業務を改善する。
  5. インシデント・オカレンス事例に対応し、その背後要因の分析に基づいて業務を改善する。
  6. 放射線治療品質管理室のもとにWGを設置し、グループ間の業務を調整する。また、必要に応じてISO・医療業務支援部に支援を依頼する。
  7. 放射線治療品質管理委員会へ業務情報を提供し、予算措置を含めた業務改善案を申請する。
  8. その他、放射線治療の品質向上に役立つ活動を主導的に行う。

上記体制に至る沿革

2005年に放射線治療品質管理士認定機構から公表された「提言:放射線治療における医療事故防止のための安全管理の確立に向けて」を受け、当院ですでに運営されていた放射線治療品質管理委員会から、放射線の品質管理を担当する組織横断的・多職種組織を起案し、病院会議の合意を得て、2010年12月27日に「放射線治療品質管理室」が発足した。

医学物理士の給与体系

  1. 病院講師(あるいは助教):附属病院の給与規定にしたがう。
  2. 大学教員(診療業務を兼務):大学職員の給与規定にしたがう。
  3. 診療放射線技師の資格も有する者(1、2以外):診療放射線技師としての給与体系を適用する。
  4. 医学物理士の資格のみ有する者(1、2以外):附属病院非常勤職員の給与体系を適用する。

今後の医学物理士のキャリアパスに係る当施設の展望

筑波大学附属病院 職種ごとの役割図

他の施設へのアドバイス

最近では、診療報酬改訂のたびに放射線治療に関する診療報酬が引き上げられており、診療報酬の加算要件の中には、設備だけでなく、専ら品質管理を行う人員と組織の整備が要求されている。また、定位放射線治療や強度変調放射線治療などの高精度放射線治療が急速に普及し、現在では当たり前のように実施されるようになっている。これらの高精度放射線治療は、治療装置の高度な制御により実現しているため、安全管理に責任をもつ組織を構築することは急務である。しかし、組織を構築しても、その体制を支える高い専門性を持つ管理者が不足することが予想される。高い専門性を持つ管理者を育成することは機構や学会の役目と考えるが、現場レベルでの対策としては、複数名の品質管理担当者により解析結果の解釈を相互チェックしながら対応するしかないと考えている。

また、大規模組織であれば、施設内において第三者的視点を持つ組織(放射線治療品質管理室)を立ち上げる人的・資源的リソースを割くことが可能であるが、中規模以下の施設では前述の理由も相まってこのような組織運営を行うことが難しいかもしれない。そのような施設を支援するのも我々のような中核施設の責務であり、積極的に教育・支援を行っていきたいと考えている。今後、組織の立ち上げを検討するご施設の方々からの相談に対しては、可能な範囲内で対応する準備をしている。

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